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ゆるふわ(死亡時のフレーバー的なあれそれ)
ドブネズミたちのハローワールド。
ゆるふわ神輿をご覧になっている方におかれましては、
追記からご査収ください。
暑く険しい山道を抜けた先に、ふわりと宙に浮かぶ木枝や葉っぱの塊。
一般に浮遊樹と呼ばれる魔物。
今まで見てきた浮遊樹とは異なり、かなり大きく、
今までの浮遊樹が子分だとしたら、親玉にあたりそうな様相をしている。
「おっと、そこだね」
前を行く大剣を背負った少女が、声を低くし、注意を促す。
「気を付けないと……」
野営を挟み休息したものの、戦いが続き、重傷者もいる。
仲間の、大剣を背負った少女と田舎から冒険に出てきた長身の男は、
前の山犬の魔物との戦いで重傷を負い、
比較的軽度の負傷で済んでいるのは、私と、記憶のない青年だけだった。

植物の魔物は、嫌いだ。
動物の魔物は、身体の構造上動きが多く、声を発する場合もあり、
敵意や害意を読み取りやすいが、植物の魔物にはそれらが少ないことが多い。
例えばハエトリグサのように、獲物が来るまでじっと待ち、
獲物が自分の領域に来るや否や、即座に獲物を捕らえる。罠のように。
そんな植物の魔物に、私も、私の家族も、辛酸を嘗めさせられてきた。
目の前に立ちはだかる浮遊樹を見るだけで、悍ましい記憶と恐怖が込み上げる。
それでも、この迷宮を抜けるためには避けて通ることはできない。

浮遊樹が私たちを認識する前に、動き出す。
少女が大剣を振り降ろし、のっぽの男は短剣で薙ぐ。
「よおく狙って……!」
弓に矢をつがえ、放つ。
す、と浮遊樹に身を動かされ、掠めるにとどまる。
しかし、それに合わせ、青年が素早い動きでクロスボウを撃ち、矢を直撃させた。
通常より巨大な魔物とはいえ、一度、多くても二度攻撃を凌げば、倒しきれる。
攻撃を無防備に受けた浮遊樹が、揺れる。
攻撃が来る。
そう意識して、弓を降ろし、避けるため身構えようとする。
他の仲間達も、攻撃に備える。
そのときにはもう、音がした。
ぐしゃりと、骨肉を貫く音が。

やっぱり、植物の魔物なんて、嫌いだ。

「あ……、が、はっ……」
気づいたら、足が一瞬地面を離れ、
身体は後方へと流れて、地面に墜ちた。
反射的に声が出そうになり、身体は呼吸をしようとしたが、
多量の血が喉を逆流し、口から溢れる。目を下にやると、
胸の辺りに、樹の枝を束ねたようなものが深々と突き刺さっているのが見えた。
服の緑が、白が、黒い赤に染まっていく。
倒れた衝撃で三角巾がほどけ、詰めていた金色の髪が無造作に投げ出された。
身体が言うことを聞かない。痛みに耐えかねて声をあげることすら、できなかった。
手足を動かそうとしても、ひくひくと痙攣するだけで、動かない。
視界が次第にぼうっと霞んでいく中、私は死ぬんだなぁ、という思考が過った。

四月からの冒険。
新しい仲間との迷宮攻略。
大剣を振り回す無愛想な少女。
迷宮をおっかなびっくり進む男。
自分のことさえよく覚えていない青年。
失敗も多くあったけれど、それでも何とかやってこれた
。森を行き、洞窟をくぐり、山脈を越え、樹海を切り抜けて。
お祭りも、もう三月も前のことだ。
人混みを一緒に歩き、美味しいものを食べ、綺麗なアクセサリを見つけ、流れ星に祈った。
「どうか皆無事でありますように……」

この山を抜けて、あと2ヶ月の冒険を過ごすことができれば、迷宮攻略は終わりのはずだった。
そうすれば報酬をもらって、家に帰ることができた。
家族の待つ家へ。父と姉が待つ家へ。
山や森などの土地だけはある、地主兼下級貴族リンヌンラータ家の父と、
似たような家柄を持った母との間に、私と姉は生まれた。
お金をもっているわけではなく、先祖代々の土地を使って生活をしているだけだったが、
優しい父母のもとで、学び、遊び、時には手機を織ったり、
野山を駆け回ったりできる幸せな生活を送ることができた。
そんな日々が突然終わることは、想像もしていなかった。
迷宮の出現によって、生活は一変した。

所有していた野山に顕れる迷宮。
そこでの仕事を依頼していた人が消え、
軍にも迷宮の攻略を依頼をするが、対応は追い付かない。
使える土地は減り、魔の手はやがて私たち自身にも及んだ。
迷宮の外に出てきた魔物達が、最初に私と姉を襲い、
私はかろうじて無事でいられたが、姉は体に傷を負い、心を病んだ。
そしてそれから数年もしないうちに、取引の仕事で外へ出ていた母も迷宮へと呑まれた。

父は、生活を支える傍ら、少しでも迷宮の脅威が減るよう腐心していた。
周囲の人々と連絡を取り、助け合って、必要があれば軍の協力にも応えた。
私たちが魔物に襲われ、命からがら逃げ帰ってきたとき、
今までの父とは思えない取り乱し方をしていた父は、
母が帰らぬ人となったとき、既に覚悟をしていたようで、取り乱すこともなく、
咽び泣く私たち姉妹の声が嗄れるまで、抱き締めてくれていた。

軍でも対応しきれない迷宮や魔物達に対し、父は周りの人々と協力し、
自警団を組織し、魔物を駆除、時には近隣に現れた迷宮の攻略を行えるよう、体制を整えていた。
父の背中を見ながら姉の世話をし、姉の様子に落ち着きが見られるようになった頃、
私は父に、父の自警団の仕事を手伝わせて欲しいと相談を持ちかけた
。初めは当然、私の安全を危惧し、一顧だにされなかったが、情
勢は父の願いを許さず、私は自警団の手伝いを始め、
やがて、単発の迷宮攻略にも足を運ぶこととなった。

幾度目かの春。
国は迷宮の攻略のために冒険者を募り、そして―


目の前には微かに地面が映る。
聞こえる音は、とても遠くから聞こえる、目の前の仲間たちの声。
手を伸ばそうとしても、わずかに触れられるのは虚空。
口の中は血に混じる鉄の味と臭い。

死が、近づいてくる。
「もう、少しだけ、生きたかった、なあ……」
声になっているか分からない声が、私の中に響く。
帰りを待っている人がいる。
共に道を歩いてきた人がいる。
もう一度会いたかった。
もう一度喋りたかった。
もう一度触れたかった。
もう一度見たかった。
もう一度感じたかった。
もうそれは、叶わない。

闇が訪れる。

外の世界には、悲鳴が谺した。

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